リクルートのHR Tech SBU(Indeed PLUS)で2025年6月からClaude Code、9月からCodexを現場に配布し、使い方を指定せず何が起きるか観察した社内実証をベースにした組織論。413はてブの大バズり資料。
AI議論は「仕事が消えるか」「どのモデルが賢いか」に集まりがち。本発表の第3の視点は「ボトルネックはどこへ移るか」。実装が速くなっても、開発全体が同じ倍率で速くなった現場は一つもなかった。どこかが次のボトルネックになる。
JSP+サーバーサイドのレガシー。本体に触れずJSPをAPIと捉え、JavaScript側で要件を満たす境界を設計。影響が閉じ、コンテキストも小さく。経験者の暗黙知でAIの推論を必要な範囲に絞り込み。
示唆:レガシーは作り直さなくても対象にできる。経験者が暗黙知を補うとAIは安定する。
経験が浅いメンバーがベテランと同じ手順で開発できるよう、Skillsとカスタムエージェントのパイプラインで暗黙知を仕組み化。UI/BFF/APIが疎結合な「冗長だが影響が閉じる」アーキテクチャが推論と相性良。
示唆:経験差が大きいほど仕組み化の価値が高い。疎結合性が推論の安定を決める。
Googleガイドライン等の一般論で推論を拘束しやすく、改修もフロントに閉じる。結果:起案から実装0.5日、3か月で63施策。順序の逆転が起き、会議は「作るものを選ぶ」から「作られたものを間引く」へ。
示唆:実装コストが下がるとボトルネックは意思決定に移る。作ってから間引く方が速い。
性能問題のバッチ改善でAIが苦戦。支配的だったのはコード外の現実制約(再実行性・処理時間・整合性・負荷・データ分布)。コードを全部読ませても本番の物理が見えず、偽陽性(コンパイルもテストも通るが本番で破綻)が出た。
示唆:必要なコンテキストの大半がコード外にある領域では推論の限界を超えた分が偽陽性として出る。
最初はループエンジニアリング(while:; do cat PROMPT.md | claude-code; done)で回したが、数日で数百万円のトークン代を溶かし品質は収束せず。改修後:AIは観点出しとYAMLテスト仕様書生成まで、テストコード生成・評価は決定論的プログラムに委ねるハーネスエンジニアリングで収束。
示唆:生成は確率のままでよい。品質責任を決定論の評価系に寄せるとループが収束する。
アラート起点の障害調査。ログ・ソース・運用知識・過去障害・JIRAの横断収集と仮説整理をAIに任せ、一次調査からJIRAチケット起票まで一気通貫。AIは「受け止める側」の仕事にも使える。
成否を分けたのはモデルの性能ではなく、コンテキストの構造。成功事例はすべて「1変更に必要なコンテキストを、AIが推論できる幅に収める工夫」をしていた。操作できるレバーは実質2つ:①必要コンテキストを減らす(境界を切る)②与えるコンテキストを増やす(仕組み化)。
「AIで実装が速くなっても、ボトルネックは別の場所に移るだけ。次はコミュニケーションコストと組織設計が勝負。人間の仕事は消えない、配置が変わるだけ」——歴史がずっと証明してる話じゃね?