記事の概要
デイリーポータルZ編集者で「非エンジニア」の nomolk さんが、ChatGPT Plus(月3,000円)のCodexを中心に、AI駆動開発だけでAndroidアプリをリリースするまでの全過程を綴った体験談記事です。「ずっと欲しかったアプリがなかったから作った」という動機から始まり、課金対策・トークン節約術・Google Playリリースの罠まで、初心者目線のリアルな奮闘記がまとめられています。
作ったもの
「リズム譜読み」— 楽譜のリズムを読む練習アプリ
- 楽譜を見てメトロノームに合わせてタップし、リズムを正しく読めているかを確認できる
- 「リズムを読み取る練習」ができるアプリが世になかったため、自分で作ることに
- 難易度・拍子(4/4、3/4、2/4、6/8)・スウィングON/OFFを設定可能、2パート同時練習モードも搭載
- 兄弟アプリ「ドレミ譜読み」(音の高さを読む)も同時リリース
- プレミアム(買い切り300円)で「苦手リスト」や成績推移、音色カスタマイズなどを解放
開発の流れ
- 6月末:Webサービスとして開発開始。Codexにやりたいことを書き出して投げたら、一発で動くものが出てきて感動
- 2日で基本機能完成。みんなに使ってほしくなりAndroidアプリ化を決意
- CapacitorというライブラリでWebアプリをWebView経由でネイティブアプリ化(指示して2分で完成)
- 約3週間でアプリがひととおり完成
トークン消費削減の「ケチり術」
安いプランで開発を続けるための涙ぐましい節約テクが記事の白眉です。
- 相談と実装の相手を分ける:実装方針の相談はChatGPT(リミット別計算)、実装はCodexに任せる分業方式。副産物として仕様書の最新化が定着
- 単一HTMLからモジュール分割:1ファイルに全コードがあったのを機能ごとに分割
- project-map.md の作成:どの機能がどのファイルにあるかの目次を常時更新。修正対象箇所の特定が速くなりトークン消費が減った
- Playwrightでテスト自動化:エミュレーター起動とキャプチャ座標計算を延々と繰り返すCodexの非効率な自己テストを置き換え。リリース前のシナリオテストまで自動化できて超良かったとのこと
- Web版を手放す:動作確認の二重化を避ける割り切り
- UIデザインルールのドキュメント化:勝手に変なUIを作られて後から修正する手間を削減
- モデルの使い分け:細かい修正は安いモデル、大きい新機能は強いモデル。最重要は「大きい作業後に必ずモデルを戻す」こと
- 結局Claude Codeも契約:重い改修はCodex、軽いUI調整はClaudeと分業し、ChatGPTの$100プランより安く抑えた
「エンジニアリングをしないために」の設計思想
非エンジニアとして「背伸びしない」ことを貫いた設計判断が興味深いポイントです。
- サーバを持たないユーザーのスマホ内だけで機能完結。通知送信やクラウド管理はやらない
- 運用しないランキングや期間イベントなどリリース後の運用が必要な機能を入れない
- ログインさせないセキュリティ面でも管理が楽
この割り切りにより、アプリは基本オフラインで動作し、セキュリティ懸念も最小化(最終的にクラッシュ情報取得用のFirebaseのみ導入)。
リリース時に直面した罠
課金アプリをGoogle Playで公開すると自宅住所が公開される!
- 回避策は「バーチャルオフィスで開業届を出し組織アカウントで出直す」しかない
- 著者は幸い個人事業主で開業済みだったためバーチャルオフィスを契約し組織アカウント化
- D-U-N-Sコード(企業コード)取得に1か月!(15,000円払えば1週間だったがケチった)
- Tips:D-U-N-S取得は東京商工リサーチ経由が一般的だが、Apple Developerから申請する方が圧倒的に速い。完了通知がなくても早い段階で発番済みの可能性あり
地味に大変だったこと
- メッセージのリソースファイル化と英語版対応、日本語変更を自動で英訳反映するスクリプト
- Bluetoothイヤフォンの音声遅延の自動補正(採点再計算が必要で「ユーザーに理解されにくいがバグ扱いされやすい」厄介箇所)
- 音声出力をWeb AudioからOboe(Androidネイティブ音声ライブラリ)に変更
- マルチポイント接続イヤフォンやバックグラウンド音楽再生中の挙動など実機検証
後日談
- 開発が落ち着いたためClaudeは解約しCodexに一本化。相談もCodex直接で余裕ができた
- 細かい修正は自分で直す方が早いと思いつつ、修正箇所を調べるのが面倒で結局AIに指示(「ザ・怠惰」)
この記事の価値
「非エンジニアが最安プランのAIコーディングでアプリをリリースできた」という実例として、AI駆動開発のハードルが大きく下がったことを示す好例です。特に「トークン消費のケチり方」「運用しない設計の割り切り」「Google Playの住所公開問題といったリリース実務の罠」は、これから個人開発を始める人が事前に知っておくべき実情報が満載です。